薬剤師が退職後に受け取れるお金|失業給付・傷病手当金の基礎【2025年改正対応】
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薬剤師が退職後に受け取れるお金|失業給付・傷病手当金の基礎
「辞めたいけれど、収入が途切れるのが怖い」
薬剤師は求人が多い職種なので、「すぐ次が見つかるから大丈夫」と言われがちです。しかし急いで決めた転職ほど、また辞めることになります。
じっくり選ぶための時間を確保する。そのために使えるのが、失業給付と傷病手当金です。
この2つは目的も窓口もまったく違い、同時には受け取れません。そして2025年4月、失業給付に重要な変更がありました。
監修: 現役医師(放射線治療科・大学病院勤務)
医療従事者の休職・退職に関わる立場から、制度の使いどころを整理しています。
⚠️ お断り 制度の要件は改正されることがあり、個別の適用可否は状況によって判断が異なります。実際の手続きは必ずハローワーク、加入している健康保険組合(協会けんぽ)、勤務先の担当部署にご確認ください。
まず全体像
2つの制度は、「働ける状態かどうか」で使い分けます。
| 失業給付(基本手当) | 傷病手当金 | |
|---|---|---|
| 目的 | 働ける人の再就職支援 | 働けない人の生活保障 |
| 制度 | 雇用保険 | 健康保険 |
| 窓口 | ハローワーク | 健康保険組合・協会けんぽ |
| 前提 | 働く意思と能力がある | 病気やけがで働けない |
| 在職中でも使えるか | 使えない | 使える |
失業給付は「働ける状態であること」が前提のため、病気で働けない場合は対象になりません。逆もまた同じです。
失業給付(基本手当)
受け取れる条件
原則として、離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あることが必要です。
会社都合や、やむを得ない理由がある場合(特定受給資格者・特定理由離職者)は要件が緩和され、1年間に6か月以上で受給できることがあります。
薬局のM&Aや店舗閉鎖に伴う退職は、会社都合に該当する可能性があります。 この場合は給付制限がなく、要件も緩和されるため、離職票の離職理由欄は必ず確認してください。
いくらもらえるのか(基本手当日額)
失業給付は「1日あたりいくら」で決まり、これを基本手当日額といいます。計算は2段階です。
ステップ1:賃金日額を出す
退職前6か月の賃金の合計 ÷ 180
賞与は含みません。 ここは重要で、賞与の比率が大きい場合、年収から想像する額よりも低く出ます。一方、管理薬剤師手当や各種手当は賃金に含まれるため、日額を押し上げます。
ステップ2:給付率をかける
賃金日額 × 50〜80%
給付率は賃金が低い人ほど高くなる仕組みです。在職中の給料が高い人ほど、率は50%に近づきます。
つまり受け取れるのは、在職中の給料のおおむね5〜8割です。全額は出ません。
なお、年齢区分ごとに基本手当日額の上限が設定されており、毎年8月1日に改定されます。高収入の場合は上限に当たるため、最新の金額は厚生労働省の発表で確認してください。
何日分もらえるのか(所定給付日数)
受け取れる日数は、退職理由と雇用保険の加入期間で決まります。
自己都合で退職した場合
| 雇用保険の加入期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
会社都合など(特定受給資格者・一部の特定理由離職者)の場合
年齢と加入期間の組み合わせで、90日〜330日と幅があります。自己都合よりはっきり手厚くなります。
なぜ辞めたかで、日数が倍以上変わります。 離職票の離職理由欄は必ず確認してください。事実と違う理由が書かれている場合、ハローワークに異議を申し立てられます。
結局、総額でいくらになるのか
基本手当日額 × 所定給付日数 = 受け取れる総額
イメージしやすいように、ひとつ例を出します。
例:賞与を除いた月給が35万円、勤続8年、自己都合で退職した場合
| 項目 | 計算 |
|---|---|
| 賃金日額 | 35万円 × 6か月 ÷ 180 = 約11,667円 |
| 基本手当日額 | 約11,667円 × 給付率(この水準ならおよそ5割) = 約5,800円 |
| 所定給付日数 | 勤続10年未満のため 90日 |
| 総額の目安 | 約5,800円 × 90日 = 約52万円 |
3か月分の給料には届きません。 ここは現実として押さえておいてください。「失業給付があるから当面は大丈夫」と考えていると、想定が狂います。
いつまでに受け取る必要があるのか(受給期間は1年)
見落とされやすいのがこれです。
失業給付には受給期間という期限があり、原則として離職日の翌日から1年間です。
所定給付日数が残っていても、この1年を過ぎると打ち切られます。 たとえば150日分の権利があっても、手続きが遅れて受給開始が遅くなれば、全部は受け取れません。
離職票が届いたら、すぐにハローワークへ行くべき理由がここにあります。
すぐに働けないなら、受給期間を延長できる
病気・けが・妊娠・出産・育児・介護などで30日以上働けない状態が続く場合、この受給期間を延長する申請ができます。
延長できるのは最長3年で、本来の1年と合わせて最長4年まで先送りできます。
これを使えば、「体調が戻ってから失業給付を受ける」という進め方が可能になります。心身の不調で退職した場合、知っているかどうかで結果が変わる制度です。
申請には期限があります。 働けない状態が続くと分かった時点で、早めにハローワークに相談してください。
いつから受け取れるのか(2025年4月の改正で待ち時間が短縮)
自己都合で退職した場合、給付制限期間という待ち時間があります。
| 時期 | 給付制限期間 |
|---|---|
| 2025年3月まで | 2か月 |
| 2025年4月1日以降の離職 | 1か月 |
1か月に短縮されました。 待期7日間と合わせても、以前より1か月早く受給が始まります。
例外
- 5年以内に3回以上、自己都合で退職している場合:給付制限は3か月
- 会社都合の場合:給付制限なし(待期7日間のみ)
転職回数が多い方は、この点を確認しておいてください。転職回数が多い薬剤師の転職戦略も参考になります。
給付制限を解除できるケース
離職期間中、または離職日前1年以内に、雇用の安定や再就職に役立つ教育訓練等を受けた場合、給付制限が解除されることがあります。
認定薬剤師の研修などとは別枠の制度ですが、スキルアップを考えているなら、先に訓練を受けることで待ち時間をなくせる可能性があります。ハローワークで相談してみてください。
手続きの流れ
- 退職時に、勤務先から離職票を受け取る(届くまで2週間程度かかることがある)
- ハローワークで求職の申し込み
- 待期7日間
- (自己都合の場合)給付制限1か月
- 認定日ごとに失業の認定を受け、振り込まれる
離職票が届かないと始まりません。 退職時に「いつ頃届きますか」と確認しておくとスムーズです。
薬剤師特有の注意点
薬剤師は求人が多いため、ハローワークで「すぐ就職できる」と判断されやすい傾向があります。
これ自体は問題ではありませんが、「派遣で単発の仕事をした」場合の扱いには注意してください。失業の認定期間中に働くと、その分の申告が必要になり、扱いが変わることがあります。
派遣・単発を併用する予定があるなら、事前にハローワークに相談してください。後から申告漏れが判明すると面倒です。
傷病手当金
どういう制度か
業務外の病気やけがで働けないとき、健康保険から支給される給付です。
薬剤師の場合、一人薬剤師の重責、調剤過誤への不安、クレーム対応の蓄積などから心身の不調に至るケースは珍しくありません。
「辞める前に、まず休む」という選択肢があることを知っておいてほしい制度です。
受け取れる条件
- 業務外の病気やけがで療養中であること
- 仕事に就くことができない状態であること
- 連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること
- 休んだ期間について給与の支払いがないこと(または傷病手当金より少ないこと)
支給される期間と金額
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 待期 | 連続3日間(この3日は支給されない) |
| 支給開始 | 4日目から |
| 支給期間 | 通算して1年6か月 |
| 金額の目安 | 支給開始日以前の標準報酬月額をもとに計算した日額の約3分の2 |
支給期間は「通算」です。途中で復職して再び休んでも、支給されなかった期間は含まれません。 復職に挑戦してもリセットされない設計になっています。
退職後も受け取れる場合がある
見落とされやすいポイントです。次の条件を満たせば、退職後も引き続き受け取れることがあります。
- 退職日(資格喪失日の前日)までに、継続して1年以上の被保険者期間があること
- 退職時に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること
つまり、在職中に受給を開始しておくことが鍵です。
⚠️ 注意:退職日に出勤してしまうと「働ける状態だった」と判断され、継続給付の要件を満たさなくなる可能性があります。必ず事前に健康保険組合に確認してください。
求人を実際に見ながら考えたい場合は、当サイトのランキングで1位に挙げているファルマスタッフが起点にしやすいです。日本調剤グループという薬局運営の母体があり、担当者が職場の内側を把握したうえで紹介してくれます。登録・相談は無料です。
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「まず休む」という選択肢
薬剤師の相談で感じるのは、限界まで働いてから辞める人が多いということです。
制度上は、辞める前に休職して傷病手当金を受け取り、回復してから次を考えるという順序も取れます。
この順序の利点は明確です。
- 収入が完全には途切れない
- 健康保険に在職のまま加入し続けられる
- 回復してから冷静に転職先を選べる
- 復職という選択肢も残る
急いで決めた転職が失敗しやすいことは薬剤師の転職失敗例7選でも触れています。
心身の不調がある場合は、まず産業医や主治医に相談してください。診断書があれば休職の手続きが進められます。
その他に確認しておきたいこと
健康保険をどうするか
退職後の選択肢は主に3つです。
- 任意継続被保険者(在職時の健康保険を継続。原則2年間)
- 国民健康保険に加入
- 家族の扶養に入る
保険料の計算方法が違うため、両方を試算して安いほうを選ぶのが基本です。市区町村の窓口と健康保険組合の両方に問い合わせれば金額が分かります。
年金
厚生年金から国民年金への切り替え手続きが必要です。収入が減る場合、保険料の免除・猶予制度が使えることがあります。
住民税
住民税は前年の所得に対してかかります。退職後、収入が減っているのに前年分の請求が来るため、驚く人が多いです。
薬剤師は比較的年収水準が高いため、この負担は無視できない金額になります。事前に把握しておいてください。
退職金
勤務先によって制度の有無と水準が大きく異なります。詳しくは薬剤師の退職金相場で整理しています。
有給休暇
退職前に消化するのが原則です。買い取りは法律上の義務ではありません。進め方は薬剤師の円満退職の進め方をご覧ください。
転職サービスをまだ決めていない方へ
薬剤師転職サービス おすすめ比較ランキング【現役医師が選ぶ2026年版】で、各社の強みと弱み、選び方の基準を医師目線で整理しています。
まとめ
- 退職後のお金は失業給付と傷病手当金の2本柱。同時には受け取れない
- 使い分けは「働ける状態かどうか」
- 失業給付は原則、離職前2年間に被保険者期間12か月以上
- 金額は在職中の給料のおおむね5〜8割。賞与は計算に含まれない
- 日数は自己都合なら90日・120日・150日(加入期間による)。会社都合なら90〜330日
- 受給期間は離職日の翌日から1年。過ぎると残っていても打ち切られる
- すぐに働けない事情があれば、受給期間を最長4年まで延長できる
- 2025年4月から、自己都合退職の給付制限が2か月→1か月に短縮
- 5年以内に3回以上の自己都合退職は3か月。教育訓練で解除できる場合もある
- M&A・店舗閉鎖による退職は会社都合の可能性。離職票の理由欄を必ず確認
- 傷病手当金は連続3日の待期後、4日目から通算1年6か月、日額の約3分の2
- 在職中に受給を開始していれば、退職後も継続して受け取れる場合がある
- 「辞める」前に「休む」という順序も選べる
- 住民税は前年所得にかかる。年収水準の高い薬剤師ほど負担が大きい
薬剤師は次が見つかりやすい職種です。だからこそ「すぐ決めなければ」と焦る必要がありません。
制度を使って時間を買い、納得できる職場を選ぶ。 これが遠回りのようで、いちばん確実な道です。
本記事は2026年9月時点の一般的な情報提供を目的としたものです。制度の要件・金額は改正される場合があり、個別の適用可否は状況により異なります。実際の手続き・受給可否については、必ずハローワーク、加入している健康保険組合(協会けんぽ)、市区町村の窓口、および勤務先の担当部署にご確認ください。当サイトは個別の給付相談に応じるものではありません。
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